再野蛮化・自己野蛮化

ジェームズ・C・スコットによる表現。『ゾミア―― 脱国家の世界史』に登場する。スコットによれば、一般に「未開の部族」と理解される山民は、文明に触れたことがない無垢で無知な人々というよりも、積極的な意図をもって水稲耕作国家から逃亡してきた人々である。スコットは、水稲耕作国家を相手方として、それを異化し、アイデンティティを確立し、独自の文化を築いてゆくことを、再野蛮化・自己野蛮化と表現した。

山民が、土地あたりの収量が多い水稲耕作を行わないのは、それを知らないというより、政治的な創意工夫によって積極的に拒否しているからである。また、文字よりも口承史を好むのは、愚かというよりは、固定的で永続的な社会構造を忌避しているからと言える。

むいむいの森は、21世紀において、逃避と自由の可能性を塞ぐ、ある種のテクノロジーや制度を積極的に拒否したりする。それは単なる野蛮や非効率に見えるかもしれない。しかし、それはテクノロジーを知らないというよりも、意図を持った再野蛮化・自己野蛮化の実践なのかもしれない。